Window.postMessage()

window.postMessage() は、 Window オブジェクト間で安全にオリジン間通信を可能にするためのメソッドです。例えば、ポップアップとそれを表示したページの間や、iframe とそれが埋め込まれたページの間での通信に使うことができます。

通常、異なった複数のページでのスクリプトはそれらが実行されたページが同じプロトコル、ポート番号、ホストである場合に限りお互いにアクセスすることが可能です(「同一オリジンポリシー」とも呼ばれます)。正しく使用した window.postMessage はこの制限を安全に回避するための制御された仕組みを提供します。

大まかには、ウィンドウが他のウィンドウへの参照を取得できる場合 ( targetWindow = window.opener など)、targetWindow.postMessage() を使って MessageEvent をそのウィンドウ上で配信することができます。受け取ったウィンドウでは必要に応じて自由にイベントを処理することができます。window.postMessage() に渡された引数 ("message") はイベントオブジェクトを通して対象のウィンドウに公開されます

構文

js
postMessage(message, targetOrigin)
postMessage(message, targetOrigin, transfer)

引数

message

他のウィンドウに送られるデータ。データは構造化複製アルゴリズムに従ってシリアル化されます。つまり、手動でシリアル化することなく様々なデータオブジェクトを宛先に安全に渡すことができます。

targetOrigin

イベントを配信するこのウィンドウのオリジンを指定します。リテラル文字列 "*" (優先順位なし) か URI のどちらかで指定します。イベントが配信される予定時刻に、このウィンドウの文書のスキーム、ホスト名、ポートが targetOrigin で指定されたものと一致しない場合、イベントは配信されません。この仕組みにより、メッセージが送信される場所を制御できます。例えば、 postMessage() をパスワードを送信するために使用する場合、悪意のある第三者によるパスワードの傍受を防ぐために、この引数がパスワードを含むメッセージの受信予定者と同じオリジンの URI であることが絶対に重要でしょう。 他のウィンドウの文書がどこにあるものか知っている場合は、 * ではなく、常に特定の targetOrigin を指定してください。特定のターゲットを指定しないと、悪意のあるサイトに送信したデータが開示されてしまいます。

transfer 省略可

メッセージと一緒に移譲される移譲可能オブジェクトのシーケンスです。これらのオブジェクトの所有権は送信先に移譲され、送信元では使えなくなります。

返値

なし (undefined)。

配信されるイベント

window は以下の JavaScript を実行することで、配信されたメッセージを受け取ることができます。

js
window.addEventListener(
  "message",
  (event) => {
    if (event.origin !== "http://example.org:8080") return;

    // …
  },
  false,
);

配信されたメッセージには、以下のプロパティがあります。

data

他のウィンドウから渡されたメッセージを保持しているオブジェクト。

origin

postMessage が呼び出されたときにメッセージを送るウィンドウのオリジン。この文字列は、プロトコルと "://"、ホスト名(存在する場合)、そして、":" の後に続くポート番号(既定のポートと指定したポートが異なる場合)が連結されたものです。典型的なオリジンの例は https://example.org (この場合のポートは 443)、http://example.net (この場合のポートは 80)、そして http://example.com:8080。このオリジン生成元はそのウィンドウの現在もしくは将来のオリジンであることを保証していないことに注意してください。 postMessage が呼び出された時とは異なる場所に移動しているかもしれません。

source

メッセージを送った window オブジェクトへの参照。これを使うことでオリジンの異なる二つのウィンドウ間で双方向の通信を確立することができます。

セキュリティの考慮事項

他のサイトからメッセージを受け取りたくない場合、message イベントに対して一切イベントリスナーを追加しないでください。これはセキュリティ的な問題を避けるための完全にフールプルーフな方法です。

他のサイトからメッセージを受け取りたい場合、origin あるいは source プロパティを用いて常に送信者の識別情報を確かめてください。任意のウィンドウ(例えば、http://evil.example.com も含む)は任意の他のウィンドウにメッセージを送ることができ、見知らぬ送信者が悪意あるメッセージを送らない保証はありません。識別情報を確かめたとしても、常に受け取ったメッセージの構文を確かめるべきです。そうしないと、信頼されたメッセージだけを送るとして信頼されたサイトにセキュリティホールが存在した場合に、クロスサイトスクリプティングのセキュリティホールをサイトに開けることになり得ます。

他のウィンドウに postMessage でデータを送信する場合、 * ではなく、常に具体的なターゲットオリジンを指定してください。悪意を持ったサイトはあなたの知らないうちに送信先ウィンドウの場所を変更することができ、そのまま postMessage で送信されたデータを傍受することができてしまいます。

安全な共有メモリーによるメッセージ

postMessage()SharedArrayBuffer オブジェクトを扱った際にエラーが発生した場合は、サイトのサイト間分離を適切に行う必要があります。共有メモリーは、 2 つの HTTP ヘッダーの後ろにゲートされています。

http
Cross-Origin-Opener-Policy: same-origin
Cross-Origin-Embedder-Policy: require-corp

オリジン間の分離が成功したかどうかを確認するには、ウィンドウとワーカーのコンテキストで利用できる crossOriginIsolated (en-US) プロパティを確認することで実現することができます。

js
if (crossOriginIsolated) {
  // Post SharedArrayBuffer
} else {
  // Do something else
}

ブラウザー(例えば Firefox 79)に展開され始めている共有メモリーに関する変更予定もご覧ください。

js
/*
 * http://example.com:8080 にある、window A のスクリプト:
 */

const popup = window.open(/* ポップアップの詳細 */);

// ポップアップブロッカーでブロックされず、ポップアップが完全にロードされたとき

// ウィンドウがその場所を変更していない場合、これは何もしません。
popup.postMessage(
  "ユーザー名は 'bob' 、パスワードは 'secret' です",
  "https://secure.example.net",
);

// ウィンドウがその場所を変更していない場合、
//これはポップアップに送るメッセージのキューに追加します。
popup.postMessage("hello there!", "http://example.com");

window.addEventListener(
  "message",
  (event) => {
    // このメッセージの送信者は信頼している者か?(例えば、最初開いたものと違
    // うかもしれません)。
    if (event.origin !== "http://example.com") return;

    // event.source は popup
    // event.data は "hi there yourself!  the secret response is: rheeeeet!"
  },
  false,
);
js
/*
 * http://example.com で実行される popup のスクリプト:
 */

// postMessage が呼び出された後に呼び出されます。
window.addEventListener("message", (event) => {
  // このメッセージの送信者は信頼している者か?
  if (event.origin !== "http://example.com:8080") return;

  // event.source は window.opener
  // event.data は "hello there!"

  // 受け取ったメッセージのオリジンを確かめたい場合(どんな場合でもそうするべ
  // きです)、メッセージに返答するための便利なイディオムは event.source 上
  // の postMessage を呼び出し、targetOrigin に event.origin を指定すること
  // です。
  event.source.postMessage(
    "hi there yourself!  the secret response " + "is: rheeeeet!",
    event.origin,
  );
});

メモ

任意のウィンドウが、いつでも、ウィンドウの文書の場所にかかわらず、メッセージを送るために、任意の他のウィンドウ上でこのメソッドにアクセスするかもしれません。従って、任意のイベントリスナーはメッセージを受け取る際に、origin あるいは source プロパティを用いて、まず最初にメッセージの送信者の識別情報をチェックしなければなりません。これを軽視することはできません。なぜなら、origin あるいは source プロパティのチェックの失敗はクロスサイトスクリプティング攻撃を可能にするからです。

非同期に配信されるスクリプト(タイムアウト、ユーザーが生成したイベント)のために postMessage の呼び出し元の判別が不可能であるとき、postMessage によって送られるイベントを待ち受けているイベントハンドラは例外を投げます。

postMessage()MessageEvent を、すべての待ち状態の実行コンテキストが終了した後のみ配信するためにスケジューリングします。例えば、 postMessage() がイベントハンドラーから呼び出された場合、 MessageEvent が配信される前に、そのイベントハンドラーが最後まで実行され、同じイベントの残りのハンドラーが実行されます。

配信されるイベントの origin プロパティは呼び出すウィンドウの document.domain の現在の値に影響されません。

IDN ホスト名に限った話ですが、origin プロパティの値が Unicode と Punycode のどちらなのかは一貫していません。ですから、IDN サイトからのメッセージを期待する場合にこのプロパティを用いるときは、互換性を高めるために、IDN と Punycode の両方でチェックしてください。この値は最終的には 一貫して IDN になるはずですが、現在は IDN と Punycode 両方の形式を扱うべきです。

送信元ウィンドウが javascript:data: のURLを持つ場合、origin プロパティの値はその URL を読み込んだスクリプトのオリジンになります。

window.postMessage を拡張機能で使う Non-standard

window.postMessage はクロームコード(拡張機能内および特権コード内)で実行される JavaScript で利用できます。しかし、配信されるイベントの source プロパティはセキュリティ上の制限から常に null です(他のプロパティは期待された値です)。

コンテンツスクリプトやウェブコンテキストスクリプトは targetOrigin を拡張機能 (バックグラウンドスクリプトやコンテンツスクリプト) と直接通信するために指定することはできません。ウェブやコンテンツのスクリプトは、 window.postMessagetargetOrigin"*" にして使用することで、すべてのリスナーにブロードキャストすることができますが、これは拡張機能がそのようなメッセージのオリジンを特定することができないこと、他のリスナー (制御するべきでないものも含む) が待ち受けしている可能性があるため推奨されません。

コンテンツスクリプトでバックグラウンドスクリプトと通信したい場合は runtime.sendMessage を使うべきです。ウェブコンテキストスクリプトでバックグラウンドスクリプトと通信したい場合はカスタムイベント(ゲストページから覗かれなくない場合など、必要であればランダム生成したイベント名で)を使うことができます。

最後に、 file: URL のページへのメッセージを送るには targetOrigin 引数を "*" にする必要があります。 file:// はセキュリティ上の制限のために用いることはできません、この制限は将来修正されるかもしれません。

仕様書

Specification
HTML Standard
# dom-window-postmessage-options-dev

ブラウザーの互換性

BCD tables only load in the browser

関連情報